今まで自分はJリーグ、プロ野球、そしてBリーグのチームで働いてきました。
約20年くらい業界で働いていますが、ずっと気になっている「言葉」があります。
今日はそのことについて話したいと思います。
スポーツ業界の気になる「言葉」
この「言葉」は、スポーツチーム・スポーツ業界特有なのかどうか、分かりません。
しかし、この業界で働いていると良く耳にしてきたのも事実です。
だから皆が、そういった認識をなんとなく根底に持っているんだろうな、と。
一方で自分の経験上、売上や人気を伸ばしているチームにいた時は、この「言葉」を耳にすることは、不思議とほとんど無かったのです。
その言葉とは、
「お金が無い、人がいない。
リソースが足りない」
立ち上げたばかりのクラブは、そのいずれもが厳しいのは百も承知。
特にJリーグやBリーグは財務諸表を公表しているので、その実態が生々しく分かるかと思います。
確かに資金に余裕はない。
確かに働くフロントスタッフの人数も多くない。
でも、自分も業界にいたので、身に染みてわかりますが、やることは沢山あり過ぎるんですよね。
チームで働く人のタスク
チーム運営したり、練習場を確保したり・・・
試合運営したり、ボランティアさんや警備会社、飲食店舗の交渉を行ったり・・・
自分達でスポンサーを集めたり、見込み客リストを商工リサーチのデータ等から拾って整理したり・・・
集客が大事だと言われ企画練ったり、このブレストの時間が楽しくて、妄想空想がどんどん膨らみ、でも実際に手を動かすことは無かったり・・・
色々なところでチケット販売しないと売れないと思って販売チャネルを増やし過ぎて、どのチャネルにどの席を配席したか分からなくなって混乱したり・・・
チケット売れないから色々と割引してたら、どの顧客にどの割引適用したか分からなくなり、そんな状況で営業経由でチケット頼まれては、その価格確認から苦労して、、、そして社内のプリンターでチケットを印刷したり・・・
チラシやポスター、フライヤーも自分たちで作って、そしてポスター貼りに行ったり、駅前で声を張り上げてチラシ配布もしたり・・・
ファンクラブ作ったり、様々な会員コース作ったり、メールマガジンの原稿作ったり・・・
効果検証だとURL仕込んだり、ダイレクトマーケティングだと差し込み分入れたり、その配信操作を行ったり・・・
WEBページは見やすくとHTMLを独学で習ったり、イラレかじって画像加工も行ったり・・・
映像撮らねばと、気づいたら個人スマホが選手の画像や映像でいっぱいになってて、どれがどれか分からなくなったり・・・
気づいたら、WEBやTwitter位ならまだしも、インスタもあるぞ、LINEもあるぞ、さらにYouTubeもあるぞ、になっている・・・
グッズ作ったり、ファンの方から色々リクエスト受けて、沢山の種類作って、でも気づいたら会社の倉庫がグッズの山になっていて・・・
試合のたびに段ボールなん十箱のグッズを、倉庫からスタジアムまで運んでは、陳列するも、お客様が来るタイミングはだいたい一緒でレジが混雑し、思ったよりも売れなくて、売れ残った商品をまた事務所に運んだり・・・
オンラインの時代だECが大切だと言われ、SKUの多さを恨めしながら商品登録を夜中までやったり・・・
売れたら売れたで個々のグッズを梱包したり、宛名ラベルを印刷して貼って、でも住所不定で戻ってきて困ったり・・・
「地元が大事、地域密着だ」と地域の幼稚園や小学校、公民館や各施設を色々巡って、喜ばれて嬉しいけど、、、気づいたら、いつも土日はどこかのお祭りにブースを出してて、今月は土日全く休み取ってないとか、当たり前のようになっていて・・・
たまにファンからの熱い電話が掛かってきて、その対応に1時間以上費やしたり(自分は4時間の経験あり!)・・・
それでも、会社だから毎週のように定例会議があるからその社内向けの報告書を作ったり、でも時間が無いから詰めが甘い内容になってしまい、伝わったか伝わってないか分からない資料になって、PDCAが回らなくて・・・
でももう、すぐにホームゲームがやってくるから、POP作らないとになり、ラミネート用シートが取り合いになって、足りなくなってホームセンター巡りしたり・・・
そろそろ「いいい加減にしろ!」と言われそうなので止めましたが苦笑
これがスポーツチームの現状。こんなに多くのタスクを抱えているのです。
※これでも記載してないこと、沢山あります。
多くのタスクがあるからこそ、大事なこと
自分のツイッターをフォローしている人はお気づきかと思いますが、最近の自分はJリーグクラブ、そしてBリーグクラブのYouTubeを定点観測し、そして週次でその登録者数などの数字をまとめて、公表しています。
これは今、お客様を満足にスタジアムやアリーナに呼べない時代が続き、また今後もしばらくは、集客が売り上げの基礎を築いてたチームにとって、厳しい世の中にシフトしていくことが予想される中、力を入れてほしい、力を入れることがサスティナブルなクラブ運営につながるのではないか、と自分は信じているからです。
でも、先ほど紹介した通り、クラブ・チームややるべきタスクが山ほどあるからです。
そもそも、スポーツチームの運営は、まだまだアナログな部分が多く、列挙したタスクの量と種類から分かるように、かなり無理をしないと運営が成り立たない状況にまだまだあるのです。
だからこそ、チームやクラブの経営者が大事にしてほしいことがあります。
それは、この3つ。
「軸を決めること」
「やらないことを決めること」
「やると決めたら、トコトンやり続けること」
売上・人気が伸びているチーム・クラブは、この線引きがはっきりしている印象です。
やらないことは「●●だからやらない」とトップ自らが決め、それを社内はもちろんファンにも語り掛け、自身の判断だということを明確にする。
でも「やる」と決めたことは、這いつくばってもトコトンやり抜き、形にする。
優先順位を決めて、新たなことができる余裕が生まれたら、次にやるべきことを始める。
そしてまた、「やる」と決めたことを、形にする。
そうして形にしたものを一つ一つ築き上げていく。
その繰り返し・・・
とにかく、チーム・クラブは全てのリソースが限られている。
だからこそ、トップが「やらないこと」を決め、それを社内に徹底していってほしいな、と感じています。
傾向として、「中途半端」が多過ぎるんです。。。
そして、「決めた、やること」の徹底と、この繰り返し&積み重ねが、「ブランディング」、つまりクラブの「色」になるのかな、と思っています。
本日の一冊。
10年くらい前の内容となりますが、プロ野球の球団運営を現場レベルで網羅的に書かれているものとしてご紹介。プロ野球経営を全体的に知りたい初心者の方にお勧め。新書なので、多くの人に理解されるよう分かりやすく書かれています。