2020年8月~9月にnoteで書いていたものから、アクセス数が多かった記事を、今振り返ってどう感じたかを追記して再掲したものとなります。
~~~~~
本記事は2020年9月14日にアップしたもの。タイトル通り、来場者全員にユニフォームをプレゼントする企画の背景を書いています。
本文中には「採算度外視」という言葉が多く並んでいますが、実際にはLTVの視点から、採算性はしっかり計算していたりします(もちろん、試合単位で考えると真っ赤ですが)。
クラブ運営をされている方だと、かなり思い切った策に感じるかもしれません。でも大切なのは、企画単体のPLだけで見るのではなく、年間通じた「投資」という発想を持つこと。
ファン獲得するためには何をすべきか、どういった仕掛けをすべきか。
こうした発想で考えれば、来場者全員にユニフォームをプレゼントすることが十分に成り立つ企画であることも分かるかと思います(経営観点では、並行してキャッシュフローの視点を持つ必要はありますが・・・)。
まずは以下、2020年9月14日にアップしたものを読んでいただき、スポーツマーケティングのリアルを是非、お楽しみください。どういったロジックになっているか、企画立案する時の考え方は、改めてご紹介したいと思います。
~~~~~
本日、このような内容でクラブから発表させて頂きました。
早くも多くの反響を頂きありがとうございます。また本企画の効果から、チケット購入も動いており、有難い限りです。
このnoteでは、開幕節で来場者全員に「開幕スペシャルユニフォーム」のプレゼントを企画するに至った経緯や意図をお話ししたく思います。
まず最初に訴えたいこと。それは、クラブ発表のニュースにも書かれていますが、全くもって採算度外視の企画です笑
特に今シーズンは入場者数に制限が掛かる状況だからこそ、なおさら収益は限られています。このレプリカユニプレゼントを社内で議論した際も、当然のように、沢山の入場者数を集められる試合で行った方が良いのでは?という意見がありました。
普通の感覚なら、勝負しない。です。
それでも群馬クレインサンダーズは、入場者数が制限され、限られた人数のお客様しか来れない状況でも、あえて勝負を仕掛ける決断をしました。
それはーー
昇格したいから。それもぶっちぎりで。
選手を後押しするためなら、何でもやろうの気持ちです。
選手を後押しするには、試合会場をホーム有利の雰囲気にすること。
コートでプレーする選手に力を与えるためには、会場をホームカラーに染め上げ、選手がふと顔を上げた時、アリーナ全体が味方になって応援しているという視覚的なアピールをしたかった、から。
苦しい時は必ず訪れます。その時に選手の力になりたい、と。
とにかくコロナ禍で大声を出すことが制限される中、それなら会場の雰囲気で相手を圧倒しよう。そのような発想が発端です。
さらに付け加えるならば来場される皆様への「感謝の気持ち」です。
特に開幕戦は、まだ言葉に現しづらい不安を抱え、なかなか会場に来ることに踏ん切りがつかない方もいらっしゃるかと察します。
でも、このような状況にも関わらず、群馬クレインサンダーズに期待して試合会場にご来場して頂けることを選んでくれた。これは本当に本当に有難いことだと感じています。そんな来場して頂いた皆様に、感謝を形で現したい。これも理由です。
また、昨シーズンの映像や写真を見た時、サンダーズイエローを身に付けた方が思ったより多くなく、一体感を醸成するには、皆がホームカラーを身に付け、同じ想いになっていることを感じてもらうことも必要だろうと考えたのもその理由です。
もちろん、もらったら誰もが嬉しい。誰もが欲しがる。これが最大の理由です。
このように様々な理由がありますが、兎にも角にも群馬クレインサンダーズは、「B1昇格」へ本気です。
ここからは少し、打算的な話しも。
企画実施を検討する際、実はコロナ禍の中で先に有観客で試合を行なっているプロ野球やJリーグの来場者数の推移をかなり研究していました。
数字を見ると上限5,000人は、昨年までの平均入場者数からだと、ほとんどのプロ野球やJリーグクラブがチケット争奪戦になっておかしくないはずが、実際には上限まで入っているクラブとそうではないクラブがあったりします。
その差や要因は何か。様々な角度から研究し、そこで群馬クレインサンダーズは何をすべきかを考えました。
そこでの結論が、試合会場に来てもらうには、思い切った企画で、皆を「あっ」と言わせる企画でないと、来場には繋がらないという仮説です。その仮説から、今回のレプリカユニフォームのプレゼントに至りました。
ただこれは継続的にやるにはコストや色々な観点から何度もできるものではありません。だったら最初にやって、その効果が後々に波及することを期待しよう、と。
ちなみに会場をホームカラーに染めるだけなら、コストも比較したら安価なTシャツでも満たされるのですが、あえて採算度外視でレプリカユニフォームに拘りました。
Tシャツプレゼントだとインパクトが少ないのと、観戦後は自分の経験からも部屋着になってしまって、その後の試合に着てもらえないんですよね苦笑。
継続して、試合会場に来る際はレプリカユニフォームを着てもらいたい。そんなことも少し考えました。
ちなみにこのレプリカユニフォーム、サンプルが事務所に来た時の社内の反響はこんな感じでした。
「これを無料で配っちゃうんですか!そんな太っ腹で採算は大丈夫なんですか?」
「これ、自分がバスケする時に着ちゃえますね。ってか、選手のユニフォームもこれでいけるくらいじゃないですか!」
「営業妨害。グッズが売れなくなります!笑」
さすがにプロの選手が試合で着るには、素材のストレッチなどから厳しいですが笑、こうした感想が漏れ聞こえる程、実物は驚きの反響でした。
ちなみに自分も最初の感想は、
「ちょっと良過ぎるから、少し劣化させた方が良くないか」
と企画担当者に言ってしまったくらいです笑
皆様も現物を手にしたら恐らく、同じような感想を抱く代物です。ご期待ください!
最後に。
自分は昔、プロ野球・楽天イーグルスで働いていたのですが、その時の社長・島田享さんからは本当に色々なことを学びました。様々な学びの中から、一つを紹介して締めくくりたいと思います。
「企画の心得。ファンの期待通りだと満足にしかならない。でも、ファンの期待を1mmでも超えたら感動に繋がる。人は感動したら、他人に話したくなる」
本日はここまで。 ご拝読ありがとうございました