プロ野球やJリーグ、Bリーグといった観戦スポーツの顧客は誰でしょうか。
それはクラブ・チームが提供したものにお金を払ってくれる方、つまりファンであると私は考えます。
そして、クラブ・チームの目標はファンを喜ばせること。
つまり喜び=価値を提供し、その見返りとしてお金を払ってもらうこと。
一人でも多くのファンに行動を起こしてもらうことが大切だと思っています。
ファンの方に喜んでもらえるよう、どういったサービスを提供するか、できるのか。
その時に私が基本としているのは「観戦スポーツ=サービス」だという考えです。
「サービス」とは、その特徴は?
サービスについてコトラーは、その特性を以下のように特徴づけました。
●無形性/非有形性 サービスは形がなく無形財である ●同時性/不可分性 サービスは生産と消費が同時に発生する ●非均一性/変動性 サービスは誰がいつ提供するかで品質を標準化することが困難である ●消滅性/非貯蔵性 サービスは蓄えることができない
「サービス」という言葉を「観戦スポーツ」に置き換えてみると、とても腑に落ちると思います。
「観戦スポーツ=サービス」
では、サービスのマーケティングで大切なことは何か。
マーケティング用語の「4P」は、多くの方が知っている知識かと思います。
Product (製品)
Price (価格)
Place (流通)
Promotion(販売促進)
これがマーケティングの4Pの要素。
スポーツマーケティングを考える時にも、この4Pで施策を検討し、実行するに移すクラブ・チーム関係者が多いかと思います。
しかし、それではサービスマーケティングの全てを網羅していないだけでなく、ちょっと足りないな、と思ってしまいます。
なぜ「4P」だと、ちょっと足りないのか
タイトルにも書きましたが、スポーツマーケティングは7Pで考える必要がある。
この「4P」というのは、マーケティングを勉強した方なら当然ご存じかと思いますが、主に製品を作って売る製造業にあてはめたマーケティング手法であります。
皆さんも同じかと思いますが、観戦スポーツは製造業ではないですよね。
だから「4P」だと、ちょっと足りない。
観戦スポーツはサービスだからこそ、マーケティングも「7P」で考えるのが大切なのです。
サービスマーケティングは「7P」で考える
4P+ Personnel(人) Process(プロセス) Physical Evidence(物的証拠)
3つのP=「Personnel」「Process」「Physical Evidence」について解説しますね。
Personnel(人)
レストランで例えると、とても美味しい食事を食べられたとします。
しかし、従業員の接客が横柄で最悪でした。
多くの人は「もう二度とこのレストランには行くまい」と感じると思います。
観戦スポーツも同じです。
いくら選手がピッチで素晴らしいプレーを見せたとしても、スタッフの接客振舞い次第では、全てが台無しになってしまいます。
これは直雇用のスタッフだけでなく、アルバイト、ボランティア、売店の店員、警備員、清掃員まで、すべてに及びます。
お客様と接点のあるスタッフが、どういった接客や振舞いを行えるか。さらに、そこに統一感を持ってできるか。
またクラブ・チームの運営者は、その教育を行い、全体サービスとしてお客様にどう提供できるか。
有名な書籍としてスカンジナビア航空のサービスポリシーを描いた「真実の瞬間」という書籍がありますが、観戦スポーツを運営するクラブ・チームの方には一度、読んでもらいたい内容です(巻末でご紹介します)。
Process(プロセス)
スポーツ観戦時にファンの方は、大雑把にこうした行動を取るかと思います。
0)情報収集
1)チケット購入
2)会場への移動
3)入場
4)着席
5)観戦
6)飲食や応援グッズの購入
7)トイレ等
8)退場
9)帰宅
この過程一つ一つがプロセスであり、ストレスなく行っていただくことが必要です。
どこか過程でファンの方がストレスを感じていたならば、改善することが大切になります。
またこの「プロセス」の意味として、ストレスなく行動してもらう以外にも、どれだけワクワクしたプロセスを提供できるか、という解釈も考えられます。
例えばファーストステップとなる「情報収集」であれば、
「試合をとてもとても見たい!待ち遠しくて仕方ない!!」
とファンの方に思ってもらえるよう、情報を提供できるか、も大切になります。
これは、「ストーリー」と置き換えても良いかもしれません。
テレビ中継や、格闘技の試合前に流れる「煽りV」などは、分かりやすい好例ですね。
Physical Evidence(物的証拠)
スポーツ、その観戦体験は形ないものであります。
特にスタジアムでの観戦経験は、その時しか味わえないものであり、時間の経過とともに忘れ去られてしまうものです。
また形ないものであるからこそ、眼に見えるもの、形あるものが観戦体験をリッチなものにさせてくれる、とても大切な要素となります。
例えば会場の装飾であれば、バックヤードが見えないような導線を工夫する等。
Physical Evidence(物的証拠)という文字そのままとらえると、グッズなども当てはまりますね。
見た目、手にした瞬間の手触り質感、匂いまで。
また飲食の容器であったなら、カッコいいチームのロゴ入り容器とかだと素直に嬉しい。
最後に
こうした細部までの気配り・思いやりの積み重ねが「4P」にはなかった、サービスマーケティングを特徴づける「7P」。
そして、スポーツのマーケティングは「7P」で考えることが大切である、と感じています。
自分がリーグやクラブ・チームで働いている時、マーケティングを設計する際には、こんなことを常々考えながら日々の業務に取り組んでいました。
是非、今チーム・クラブで運営されている方には、こうした発想や考え方もあり、また何か施策を行う時には、マーケティングを「7P」で考える癖を持っていただければ嬉しいです。
少しでもスポーツ業界が良くなればと想い、筆を執りました。
こうした考え方に至った参考書籍
その他、おすすめ書籍まとめもご参考ください